【早春賦(そうしゅんふ)】歌詞&音源
春は名のみの風の寒さや
谷の鶯(うぐいす)歌は思えど
時にあらずと声も立てず
時にあらずと声も立てず
氷解(と)け去り葦(あし)は角(つの)ぐむ
さては時ぞと思うあやにく
今日もきのうも雪の空
今日もきのうも雪の空
春と聞かねば知らでありしを
聞けば急かるる胸の思いを
いかにせよとのこの頃か
いかにせよとのこの頃か
(作詞:吉丸一昌、作曲:中田章)
『早春賦』歌詞解説
『早春賦』は、春の訪れを感じさせるものが少しずつ現れているのに、まだまだ寒さが残る早春の情景を歌った曲です。
「春は名のみの風の寒さや」
→「春になったとはいうものの、風はまだ冷たい」という意味です。暦の上では春でも、実際には冬のような寒さが残っています。「春は名のみ」という言葉から、名ばかりの春を感じる作者の思いが伝わります。
「谷の鶯 歌は思えど 時にあらずと声も立てず」
→谷にいる鶯(ウグイス)が鳴こうとは思っているものの、「まだその時ではない」と鳴かずにいる様子です。ウグイスは春を告げる鳥として知られていますが、この歌ではまだ本格的な春が来ていないため、声を聞かせてくれません。
「氷解け去り 葦は角ぐむ」
→冬の間張っていた氷が解け、葦の芽が角のように少しずつ出てきた様子を表しています。「角ぐむ」は、植物の芽が角のように出始めることです。冬から春へと季節が動き始めていることが感じられます。
「さては時ぞと思うあやにく」
→「いよいよ春が来る時なのだと思ったのに、残念なことに」という意味です。「あやにく」は、期待に反して物事がうまくいかないことを表す言葉です。春の気配を感じたと思ったのに、今日も昨日も雪の空。まだ春は遠いようです。
「春と聞かねば知らでありしを 聞けば急かるる胸の思いを」
→「春が来ると聞かなければ、春を待ち焦がれることもなかったのに、春が来ると聞いてしまうと、早く春になってほしいという気持ちが募ってくる」という意味です。
まだ寒い冬の景色の中に、氷が解けたり、葦が芽を出したり、ウグイスが鳴こうとしたりする小さな春の兆しがあります。そのために、かえって春を待つ気持ちが強くなる――。『早春賦』は、そんな春を待ちわびる人の心を、美しい自然の風景とともに歌った曲です。

